Brand Story|ウッドフィールド誕生秘話
こんにちは。ウッドフィールド代表のタカシマです。
あなたには、心に残っているワンちゃんとの思い出はありますか?
私にとっては幼少期に出会った一匹の野良犬──ケンちゃんとの日々でした。
今日は、ウッドフィールドを立ち上げるきっかけとなった、その思い出をお話しさせてください。
ケンちゃんとの出会い
栃木県の田舎町に住んでいた私は、物静かな小学生でした。
学校から帰ると、家で本を読んだり絵を描いたりする毎日を送っていました。
でも、あの日の学校帰りにふと神社に立ち寄ったことで私の毎日は大きく変わりました。
一匹の野良犬が、ひとり座っていた私に向かって近づいてきたんです。
それは近所の人たちから怖がられている野良犬でした。
黒くて大きなミックス犬で、吠えたり噛み付いたりするため、誰もが「危ない犬」として避けていた存在でした。
私も両親から「あの犬には近づかないように」と言われていたくらいです。
でも、不思議と怖くはありませんでした。
口に咥えていた赤いボールをポトンと私の目の前に落とし、
「遊ぼう」と言っているのだと思いました。
ボール遊びが日常に
勇気を出してその赤いボールを投げてみると、彼は嬉しそうに咥えて戻ってきました。
そこから私たちのボール遊びが始まりました。学校帰りには毎日神社に行くようになり、夕方の鐘がなるまで遊ぶようになりました。
そしてその犬を「ケンちゃん」と名付けました。
幼稚園のころ、一番仲良しだったけど引っ越してしまった友達の名前をそのままつけました。
給食をこっそり持ち帰ってあげたり、一緒に探検したり。
私にとっては二人で過ごす時間が何よりの楽しみになりました。
別れの日
しかし、そんな日々にも終わりが訪れます。
父の転勤が決まり、私たち家族は東京へ引っ越すことに。ケンちゃんを連れて行くことはできず、私は大泣きしました。
引っ越しの前日、ケンちゃんにお別れをするため神社に行きました。
ケンちゃんは赤いボールを咥えてやってきて、いつものように遊びたそうな顔をしていました。
「ケンちゃん、もう行かなきゃいけないんだ。もう会えないんだ。」
そう言ってお別れを告げると、ケンちゃんはただ私をじっと見つめていました。それが、ケンちゃんとの最後の時間でした。
思い出の赤いボール
それから数年ほどが経ち、当時の、田舎町を訪れる機会がありました。
どうしてもケンちゃんのいた神社に行きたくて足を運んでみたものの、そこにケンちゃんの姿はありませんでした。
しかし、ふと神社の軒下を覗いてみると、あの赤いボールがそのまま残っていました。
それを手に取った瞬間、ケンちゃんとの日々が鮮やかに蘇り、涙がぼろぼろ溢れて止まりませんでした。
そのボールは今でも私の部屋に大切に保管しています。
大切な、大切な、思い出です。
「思い出が形になる」ということ
この経験を通じて、私は気づきました。
「モノの価値は値段ではなく、そこに詰まった思い出で決まる」ということです。
100円ショップで売っているようなボールでも、そこに思い出が詰まっていれば宝物になる。
ウッドフィールドが生まれた理由も、ここにあります。
ただの道具ではなく、大切な思い出を刻む”道具以上の存在"として、首輪やリードを作りたいと、心から思ったのです。
試行錯誤の連続
でも、最初からうまくいったわけではありませんでした。
たとえばレザー選び。
首輪の試作段階で、ある1本のレザーを使ってテストしていた時のことです。
親戚のトイプードルに首輪をつけてみたところ、
明らかにいつもと違っていました。
姿勢が猫背になって、
体もなんだかガチガチ。
「おいで!」と呼んでも、いつものように駆け寄ってこず、トコトコとぎこちない足取りで歩いてくるだけ。
まるで「着け心地が悪い」と言っているかのような反応でした。
「まさか首輪のせい?」と不安になり、すぐに別のレザーに変えてみたところ──魔法が解けたかのように元通りに。
「おいで!」と呼ぶと、猛ダッシュで駆け寄ってきたのです。
その瞬間、私は思いました。
「ワンちゃんは、私たちが思っている以上に“肌に触れるもの”に敏感なんだ」と。
レザーの追求の旅へ
そこから、レザーの質感を追求する旅が始まりました。
牛革、ラムレザー、部位による違い──
数十種類のレザーを比較。
最初は、「私のほっぺの感触」で判断しました。
目を閉じて、ほっぺにそっとあててみて「気持ちいい」と思えるかどうか。
ワンちゃんにとっても心地よいはずだと考えたからです。
そして最終判断は、ワンちゃんの反応です。
実際に首輪の形にして、
軽さ・やわらかさ・フィット感を試しながら、何度も試作を繰り返しました。
そしてようやくたどり着いたのが、今私たちが使用しているレザーです。
足すのではなく、引く。引き算の美学
「装飾的な可愛さ」を手放す決断も、大きな選択でした。
一般的に“可愛いデザイン”を目指すとき、多くはキラキラした飾りや目を引く装飾が選ばれます。
確かに、ぱっと見の華やかさは演出できるかもしれません。
でも、装飾を足せば足すほど首輪は重くなり、
「愛犬が心地よくつけられる首輪をつくる」という私たちの理念からは、遠ざかってしまいます。
さらに、装飾が増えることで全体のバランスが崩れ、
首に着けたときに“愛犬そのものの可愛さ”が引き立たなくなることにも気づきました。
だからこそ私たちは、あえて“引く”という選択をしました。
飾るのではなく、そぎ落とすことで美しさを表現する。
それが、私たちの考える「引き算の美学」です。
機能美を追求しながら、シンプルで上品なデザインに。
それは、着けた瞬間に“ワンちゃん自身が美しく見える”ことを大切にした結果なのです。
▶︎上品さはこうして生まれる。「引き算の美学」というデザイン哲学
これからも、「絆をかたちに」
レザーは、時とともに味わいを深める素材です。
使うほどに、色も表情も変わっていきます。
その変化は、あなたとワンちゃんが共に過ごした時間の記録そのものだと、私たちは思っています。
お散歩の毎日も、旅先の思い出も。
ウッドフィールドの首輪やリードが、
あなたと愛犬の時間をそっと刻む“パートナー”であれたら――それが、私たちにとって一番の願いです。
これからもウッドフィールドは、
「道具をつくる」のではなく、絆をかたちにするものづくりを続けていきます。
あなたの大切なワンちゃんとの日々が、いつか振り返ったときに素敵な思い出として思い出せるように。
そんな製品を、これからも心を込めて作り続けていきます。
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