主役を決めて、空間をつくる。はじめての生花体験日記
こんにちは。ウッドフィールド代表のタカシマです。
先日、表参道のアトリエで、
日本でも有名な先生に生花を教えていただく機会がありました。
もともと芸術や空間美には興味がありましたが、生花はまったくの初心者。
たまに花を買って部屋に飾る程度で、「ちゃんと生ける」というのは今回が初めてでした。
そんな私にも、先生はひとつひとつ丁寧に教えてくださいました。
主役を決めるところから、生花は始まる
レッスンは、まず「主役を決める」ところから始まりました。
なんとなく「きれいに花を並べるものなのかな〜」と思っていたのですが、
生花ではまず最初に、「この中で一番見せたい主役」を選ぶのだそうです。
主役を構成するのは、花器と「真(しん)・副(そえ)・体(たい)」という三つの役割。
それぞれに空間の中での役割があり、花や枝物の個性を見ながら
「これは真っすぐ伸びていて“真”っぽいな」とか、「これは曲線がきれいだから“体”に使おうかな」と想像力を必要とされるので、
この時点で、かなり頭を使います(笑)。
花の持ちが変わる「カット」の仕方
次に教わったのが、花のカット方法。
茎を水につけた状態で3回ほどカットすると、それだけで1週間ほど長持ちするそうです。
(水を吸いやすくする“水揚げ”というテクニックですね)
茎の断面が詰まると水を吸いにくくなるので、カットによって吸水性を回復させる。
水中でカットすると、小さな気泡がぷくぷくっと出てくるんですが、それを見るのもなんだか楽しい。
「これ、家で花を飾るときにも絶対やろう!」と思える学びでした。
そして、選んだ「真・副・体」それぞれを、適切な長さにカットしていきます。
その長さも、なんとなくではなく花器のサイズから計算されているのが印象的でした。
たとえば「真」は花器の2倍の長さ。すべてが構造的に考えられているんです。
“空間”をつくる
いよいよ剣山に生ける作業へ。
「真・副・体」の3つを配置し、最後に装飾の花を加えていきます。
この装飾も、ただ華やかにするためではありません。
あくまで主役を引き立てるために、主役よりも短く、控えめに配置します。
そしてもうひとつ印象に残ったのが「奥にも配置する」ということ。
正面から見たとき、手前だけでなく奥にも空間があることで、作品全体に奥行きが生まれるのだそうです。
目に見えるものだけで構成するのではなく、
見えない空間まで計算されていることに美意識の高さを感じました。
美しさは、揃えることではなく「空間を読むこと」
レッスンに先生がおっしゃっていた言葉
「生花は、空間を楽しむことなんです」が心に残っています。
枝と枝のあいだ、前と奥、角度や重なり……その空間全体で作品が完成するという考え方。
「まさに日本らしい“余白の美”だな」と思いました。
実際イギリスなどのフラワーアレンジメントでは、左右対称に整えることが美とされますが、日本の生花はその逆。
あえて不均一に。あえて揃えない。
(……でも、これ、実際やるとめちゃくちゃ勇気がいる)
私も生けているうちに、「つい同じ長さにしそうになる」瞬間が何度もありました。
でも、「あえて揃えないことで、自然な美しさが生まれる」──
という言葉を思い出しながらやってみました。
まとめ:プロダクトづくりにも共通する「見せ方の美学」
この体験を通して
“美しさ”は「揃えること」や「整えること」だけでは生まれないんだと、改めて気づきました。
不揃いの中の調和。余白の心地よさ。
そして、“何を見せたいのか”をきちんと決めることの大切さ。
これって、プロダクトづくりにもまったく同じことが言えると思うんです。
ウッドフィールドのプロダクトを作る時にも、
何を目立たせたいのかという主役を考えますし、
首輪のデザインは左右対称ではないことで美しさにつながっています。
そしてレザーの幅や金具の位置、色の組み合わせは、全体を美しく見せるためのサポートの役割。
しかしこれがあることでプロダクト全体の完成度が上がり、首につけた時に愛犬の魅力を引き立てるようになっています。
これからも、
主役を引き立てるために“必要以上に主張しない”美しさを、
ウッドフィールドらしく、丁寧に形にしていきたいと思います。